8年目血管外科医の日常

血管外科医の日常について書いています

外科医は病院に泊まるのが当たり前なのか

今回はこれから外科を目指す方も気になる部分かと思います

オーベンクラスの外科医なら大体の人が自慢げに「若かったころはICUに張り付いてずっと泊まっていた」とか「若いころは家に帰ったのは月に数回くらいだった」とか言っているのを聞く機会は多いかと思います

それを聞いて外科医を諦めてしまう人もいるのではないでしょうか

未だに、某医師向けサイトで有名な外科の先生などが書いているコラムには、若いころは何よりも病院にいるべきだとか、自分のことよりも患者のことが第一だといった根性論が書かれています

しかし、それは真実なのでしょうか?

働き方改革が叫ばれる昨今にはなじまない考え方だと思います

今回は僕の考えも含め、そのあたりのことについて書いてみます

まず、僕の考え方として先に書いた考え方とは真逆の人間です

医師とは言え、所詮は人間です

自身の生活が安定しており、十分に急速が取れた、心身ともに良好なコンディションでないといい仕事はできません

そのため、僕は医者である前に一個人としての自分の生活を大切に考えています

緊急手術明けでほぼ寝ていない状態での外来なんてほぼ記憶がないばかりか、対応自体もおざなりになりがちです

 

だからこそ、帰れるときは早く帰るべきだし、早く帰るための努力をするべきだと考えています

 

残業をしようと思えば簡単です

自分の時間を削るだけなので、ゆっくりやろうが、何かと並列してやろうが問題ありません

しかし、それで削られるのは大切な自分の時間であり、人間として成長できる機会を失ってしまうと思います

逆に、早く帰るために仕事をするというのは、簡単そうに見えて難しいです

仕事に抜けがないように手順を考えてこなしたり、医者の場合は夜中に呼ばれないように可能な限り状態を安定させたりする必要があります

 

これまでの僕の職歴の中で大きな転機になったのが4年目に行ったハイボリュームセンターです

それまでは大学での勤務だったので、上司も先のような考え方でしたし、医局としても術後は泊まるのが当然(宿泊できるような設備なんてなく、デスクチェアで寝るのですが。。。)といった雰囲気でした

そんな中で研修医を過ごし入局したので、正直病院に泊まる自分はかっこいいと思っていたし、時間外勤務時間が長いことが一つの勲章のように勘違いしていました

 

しかし、ハイボリュームセンターに行ってみると考え方は大きく変わりました

オーベンは手術を終えて落ち着いているのを確認したらすぐに帰るし、中ベンも術後4時間くらいして落ち着いていたら帰っていました

最初はそれでも泊まったりしていましたが、ある時オーベンから次のようなとこを言われました

「帰れるくらい落ち着かせるのがお前の仕事だ。どうせ夜中に病院にいても何も変わらない。ならばゆっくり寝て明日早く来て仕事した方が何倍も効率がいい」

この言葉を聞いて僕の考えはガラッと変わりました

まさにこの通りです

結婚して家族がいればなおのことです

家族と過ごす大切な時間を犠牲にするために仕事をしているわけではありません

家族と過ごす時間を充実させるために仕事をしているのです

それからは術後管理はまず全身状態を落ち着かせることを目標にするようになりました

徐々に慣れてくると6時間かかっていたものが4時間になり、日を跨がずに帰れるようになったのです

 

今では大学に戻ってきていますが、その考えは変わらずに実行しています

術後1時間は張り付いて状態を安定化させます

そこである程度落ち着かせられれば後は安心できます

帰れるか帰れないかはその時点で判断し、安定していない場合にはもちろん帰らずに泊まります

 

手術日以外は日中の勤務時間内に自分の仕事をしっかりと終わらせることを意識して仕事をしています

年数が上がると事務仕事も増えてきますが、そういったものは当直の日にまとめて終わらせたり、ちょっとした隙間時間でこなしたりするようにしています

 

こうすることで、当直日以外に泊まることはかなり減りました

また、手術日以外はほぼ定時で帰ることを意識しており、月に数回は定時退社できるようになりました

 

こんなことを書くと、お前のしてない分を上司が被っているとか、向上意欲がないとか言われそうですが、上司とは分業制にして、お互いにやる内容を分けていますし、プロフィールに書いてある通り、自身の求める医師像に向けて資格取得も順調にできています

 

以前と違い、インターネットの発達で調べたい知識はすぐに手に入りますし、you tubeや学会のビデオセッションなどで手術手技を見て学ぶこともできます

 

これがすべてでは無いとは思いますが、外科医だからと言って家に帰れない、病院に住んでいるのが当然というのはウソです

外科医だからこそ、積極的に家に帰って休むことを意識した方がいいと思います

徹夜明けは二日酔いと同じような認知能力であるみたいなことが言われた時期がありましたが、やはり疲れていると凡ミスも増えるし、ヒヤッとすることも増えます

手術中や術直後の管理ではそのちょっとした判断ミスや判断の遅れが大きな合併症を引き起こすことがあります

それを防ぐためにも、早く帰る勇気を持ってください

そして、早く帰っても文句を言われないような仕事をするように意識していれば問題ないと思います

 

術後管理などは慣れるまで数年かかりますが、それでも後期研修が終わるころまでには家に帰れることを目標にするといいと思います

 

ちなみに、僕自身3年目に大学で病院に泊まっていたころのことを思い返してみると、夜中は特に何をするでもなく、寝心地の悪いデスクチェアで寝て疲ればかり増幅させていた気がします

その泊まっていた時間に何か得るものがあったかというと、ほとんどなかった気がします

むしろ、変えるようになってからの方が、ちょっとしたことに気づいたり、少し先を読んで行動したりと、身についたことは多いです

何よりも翌日の体調が全然違うので、日々の仕事のクオリティも向上しています

 

循環器外科医らしからぬ記事ではありますが、こんなことだけで諦めてしまう人は勿体ないと思い記事にしてみました

泊まらなくても問題ないことがほとんどですので、循環器外科を目指している方はぜひ参考にしてみてください