8年目血管外科医の日常

血管外科医の日常について書いています

大学病院はかなりブラック 入局前に知っておきたい今の医療体制

今回も大学病院の闇についてです

こんなことを書けば書くほど、入局者が減っていくのはわかっていますが、自分の経験上、入局後に後悔して辞めていくとお互いにロスが大きすぎるので、やめるなら初めから入局しない方がいいと思い書いていきます

今回は大学の勤務体系についての話です

大学の勤務体系

大学病院で勤務するにはいくつかの形態があります

①医局に属する常勤医(人数制限あり)

②病院に属する非常勤医

③大学院に属する学生医

です

同じ大学病院で働いている医者でも立場はかなり違います

それぞれ見ていきましょう

①医局に属する常勤医

まずは皆さんがイメージしている状態の医者です

心臓血管外科の医局に属して、心臓血管外科医として働いているというイメージです

医局には教授1人、准教授1人、講師2人、助教〇人といったように人数制限があります

その枠内に収まると、医局に所属して仕事をすることができます

この場合、大学職員(教職)扱いで常勤になります

②病院に属する非常勤医

これは意外と知られていないパターンですが、内科など医局員の多い医局では当たり前のことです

上記の医局の人数制限に収まりきらなかった場合このような扱いになります

いわゆる医員といわれるポジションで、病院の診療業務を始め、医局員と同じ職務内容をこなしますが、教員扱いではないため授業はありません

また、身分も非常勤の日雇い扱いで毎年更新になるので、退職金や賞与等かなり大変な思いをします

③大学院に属する学生医

これは大学病院特有のものです

各医局には研究機関として毎年大学院生を抱えていないといけないという縛りがあります

しかし、地方の大学病院のように医局員が少ない場合は大学院に通っている院生でありながら病院業務を続けるという場合があります

もちろん医師としての給与は出るので良いのですが、研究と診療を両立するのはかなり大変です

また、人事によっては強制的に休学したり(最近は休学期間中も学費の支払い義務が生じる)と、金銭面で負担になることもあります

日本の場合、医学博士の学位は持っていてもほぼ役に立たないのでこのポジションになると結構つらい思いをします

 

昇進するにつれてブラックになっていく勤務体系

さて、ここからは病院の勤務体系についてです

近年の働き方改革で医師の働き方も見直されようとしてきています

その中で、今まで当たり前になっていた超過勤務問題が注目されています

心臓血管外科の若手であれば月100時間以上の時間外労働、土日も休みなしの出勤は当たり前でした

しかし、それをすると病院側が怒られるようになってきたため、表面上の体裁を保つようにいろいろと工夫がなされてきています

そんなブラックな現状を書いてみます

①意味不明なフレックスタイム制

まずはこれです

医局に属するようになると教職扱いになります

大学の教員なので研究者扱いとなり、研究のためにフレックスタイム制での勤務となります

その内容です(僕の労使協定書の抜粋です)

・平日はAM8時30分からPM5時15分までを基本の勤務時間とし、AM5時からPM10 時までの間で自由に勤務時間を調整できる

・勤務時間内には1時間の休憩時間を含む

・土日、祝日は休日とする

・給与は年俸制とする

・賞与なし

・退職金なし

こんな感じです

上3つは、フレックスタイム制としては普通のような感じもしますが、大きな落とし穴があります

それは一日の最大勤務時間、一週間の最大勤務時間の取り決めがないのです

詰まり、今の僕の場合、緊急手術や大きな手術の後でどんなに朝早くに呼び出されようが、夜遅くまで超勤しようが、AM5時からPM10時までの間は超勤扱いにならないのです

うまくできている制度です

これにより、勤務実態は一切変わらないものの、見た目の超勤時間は1日あたり4時間程度(僕の場合の平均)削られています

医員のころは出ていた超勤代が出なくなり、仕事量は変わらないので、不満は募るばかりです

見た目の超勤を削る目的での病院都合の昇進には注意して下さい

②労働局からの意味不明な通達

本来ならば上記のような違法な状態は労働局が中心になって是正していかなければならないものですが、医師の数不足(ブラックな職場に疲弊して開業などで流出)のため、正常な勤務体系にすることは困難な現状があります

そんな状況もあり、労働局から意味不明な通達が来ています

それは"日常の診療行為はチーム医療を実践するための研究であり、医療業務ではない”というものです

詰まり、医療業務扱いにしてしまえば医師としての超勤にカウントしなければならないのですが、研究にしてしまえば自己研鑽扱いになり勤務時間にはカウントしないというものです

詰まり、我々が普段大学病院で行っている医療行為はすべて患者を用いた研究であり、医療ではないと通達してきたのです

こんな通達を受けてなお、高いモチベーションをもって医療行為をする必要がある現状を知っている人はほぼいないのではないでしょうか

もちろん、政府は医療費削減を旗印に医師の給与を下げて税金を増やしています

それで救われるのは、働いていない人たちや政治家だというこの皮肉な現状が少しでの早く変わっていくことを願っています

③地域医療の砦としての存在

本来の大学病院の存在意義ですが、これがかなりのネックになっています

詰まり、焦げ付いた症例や手に負えなくなった症例が問答無用に送られてくるのです

中規模病院からの搬送依頼の特徴として、就業前(16時から18時頃)、連休前、年末年始前に送られてくることが非常に多いです

送る側は、休みが安心して遅れるのでいいのですが、送られてくる側はたまったもんじゃありません

どこの病院もマンパワー不足なのは一緒なので、どこかが楽をすればそのしわ寄せは他が負うことになります

大学はしわ寄せを負いやすい病院です

若手であればあるほど、休みや夜間の自由時間はあってないようなものです

僕も、24時間、365日PHSを離せませんし、難燃化するとPHSの着信音の幻聴を頻繁に効くようになったり、夜中にPHSが鳴った気がして目が覚めたりすることが増えてきます

大学の診療以外にバイトが必要

続いてバイトについてです

大学の給与だけでは到底生活は成り立ちません

そこでバイトをすることになります

名目上、大学の技術、知識を地域社会に広め、医療資源の再分配を行うために行われるようです

僕もバイトの収入にはかなり助けられており、年収の1/3以上はバイト代です

しかし、このバイトはプライベートな時間を大きく削っていきます

平日に週1回の当直、土日に月1回の日当直が当てられます(これは医局によって異なります)

そうなると、この当直の日は家に帰れません

バイト以外の日に緊急や大学の当直などで帰れない日があると、一週間丸まる帰宅できないなんてこともあるくらいです

バイト代も地域格差が大きく、転勤などで別の地域に行き、そこの先生の話を聞いて驚くことが多々あります

金銭的には助かるバイトですが、医師としてかなりの時間を売ることになるので、プライベートな面での負担はかなり大きなものになります

研究に関して

最後に研究に関することです

研究機関である大学では論文の執筆や学会での発表が他の市中病院に比べ重要視されます

そのため、忙しい診療時間の合間に学会発表の準備をしたり、論文を書いたりしなくてはいけません

学会発表については若手がしないといけないので、上司から指示され抄録を書き、スライドを作り、発表をしというつらい3か月が待っています

コロナ禍の前は、それでも学会期間中は発表さえあれば無条件に大学を休めるし旅行にも行けたのでそれがご褒美でしたが、最近はオンライン開催となってしまい、瀬角演題を出して採択されても現地には行けず普段通りの日々に学会の準備は重なるというただ辛いだけの状態になってしまっています

慣れてくるとスライドづくりや学会発表は楽しくなるのでいいのですが、そこにたどり着くまでに心が折れないよう頑張る必要があります

 

まとめ

ブラックな大学の現状をまとめてみました

最初に書いた通り、この記事を見て大学に入局したいと思う人は減ってしまうと思います

しかし、入局し手から辞められると、本人の時間だけでなく、指導した側の時間や労力も無駄になってしまいます

そこで、入局する前にしっかりと調べて判断することをおススメします

新専門医制度では、基幹病院であればどこかの医局に入局せずとも専門医を取得でき、しっかりとした経験を積むこともできます

若い先生方にはまだまだ多くの選択肢がありますので、自分の向き、不向き、医局や病院の雰囲気などをしっかりと見極めて充実した医師人生を歩んでください

 

この記事を読まれた法律関連の方で、この勤務体系が法的に問題がないのかわかる方がいれば、一度ご教授いただけると幸いです(笑